幅広い実績と高い技術力で信頼あるソリューション事業を展開
情報システム部門を持たない企業様が、いかに安心安全な保守保全体制を築いたのか。
卓越した金属切削技術を駆使した精密機械加工部品で、半導体製造分野や航空宇宙分野、通信機器分野といった先端産業を支える株式会社大川電機製作所様。今回お邪魔した福島工場は、そうした製品の大半を製造する基幹的生産拠点と言えるでしょう。
この福島工場で、工作機械を動かす製造プログラムを始めとしたソフトウェアやPC、そして東京本社を含む4拠点のサーバーなどの管理を生産技術部部長という本職のかたわら1人で担ってきたのが、関勝儀氏でした。言わば、あらゆる業務運営の心臓部をワンオペ状態で、しかも兼務という形で管理してきた、その精神的負担の大きさは想像に難くありません。
「ネットワークなどにひとたびなにか問題が起きれば、機械が止まるなど、業務の停滞、遅延はまぬがれません。しかも当時は不具合が起きたPCのところに実際に見に行かなければならなかったのです。それでも原因がわかれば対処もできるのですが、その原因究明に膨大な時間がかかり、いくら調べても解明できず、もうすべて投げ出して帰ってしまおうかと思ったことが何度もありました」。そうした状況のなか、自分に何かあったら会社はどうなるのか、そう考え、サブのスタッフをつけてもらいましたが、やはりトラブル発生への懸念は拭えなかったそうです。
さらに、そのデジタル環境への不安を膨らませたのがコロナ禍でした。「テレワークが増えるとともに、社会でハッカーなどのサイバー問題も激増したころでした。我が社にもそうした者が侵入してきたら大変なことになる」そう考え、セキュリティ強化が急務という意識から、IT資産の管理システム導入とクラウドによるその運営を決意したそうです。
この構造改革プロジェクトの一環として力を入れているのが、業務フローの標準化・自動化です。「少子高齢化を背景に労働人口の確保は今後ますます難しくなる見込みです。その中で企業競争力を強化するためには、業務フローを標準化・自動化し、生産性向上と業務品質の向上を図ることが欠かせません」と岩下氏は狙いを語ります。
「設備の工事は関連する業者が多岐にわたる上、工事の仕様書、発注・請負契約書、請求書など書面でのやりとりが多く、処理が煩雑。しかも、業務フローが統一されておらず、拠点や部署ごとにやり方が異なるケースが散見したのです」と構造改革プロジェクト部の青柳清隆氏は説明します。
膨大な事務作業を標準化・自動化できれば、作業の属人化から脱却し、仕事の効率や生産性が上がり、働き方改革も加速します。「そのためのソリューションの1つとして、RPAの導入を考えました」と岩下氏は述べます。
「最初はサーバーを増設するか、クラウドにするかで迷っていました。東北ではまだクラウドがそんなに浸透してはいませんでした。しかし、サーバー管理の手間はやはり省きたいという思いと、これまで経験していないクラウドを導入することで、新しい領域に一歩踏み出せるのではないかと考え、決めました」。そう語る関氏、クラウド選定にあたって最重要視したのが安全性でした。
「たとえばクラウドで管理する製造プログラムなどは製品をいかに精密に、いかに早く作るかといった、言ってみれば我が社のノウハウが詰まった機密情報の塊です。そうしたことから、まずはセキュリティと信頼度の高いメーカーを優先として、さらにはコスト面も含め中松商会が強く推薦したこともあって、AWS(Amazon Web Services)の採用を決定しました」。
また、AWS導入時のトラブル対応が、関氏の心には印象に残っているようです。「社内ネットワークとAWSがうまく同期できず、なかなか繋がらなかったのです。福島が繋がっても東京が繋がらない、東京が繋がっても名古屋が繋がらないといった感じで。全社のネットワークを止めるために夜間の対応作業となるわけですが、予定時間が過ぎても繋がらず、結局2ヵ月ほどかかりました。しかし、中松商会のSEの方が毎日毎日手を変え、品を変え、いろいろと対応してくれて、その必死さが伝わってきました。おかげで繋がってスタートできたときは、心から感謝の気持ちが湧いてきました」。
「導入後、それ以来AWS上のトラブルは起きていません。もちろん社員のPCやネットワークの不具合は起きますが、以前のようにわざわざそのPCのところに行く必要もなく、リモートで対応できるようになったのは助かりますね。それによって社員へのサポートも迅速化したので、仕事がスムーズになったとよく言われます。また、各OSのセキュリティパッチの運用状況やソフトウェアのインストール状況の可視化によってお客様対応も向上、信頼度も高まったようです。そして私自身も本職により集中できるようになったのはなによりですよ」。と笑う関氏、さらに現在は、クラウドの拡張を計画しているそうです。「古くなったサーバーを順次クラウドに切り替えようと考えています。セキュリティ性も高いし、サーバー管理の手間もなくなる。BCP(事業継続性)の観点からも安心感が違いますし。そしてとにかく技術的知識がいらないというのが大きいですね。トラブル処理やアップデートなどもすべて任せられますから」。
今後は社のさらなるデジタル化も視野に入れ、プロジェクトをスタートしたと語ります。「間接部門のIT化による作業効率向上、属人化の解消、DXの推進による多能工化および省人化を図るべく業務効率化プロジェクトを立ち上げたところです。今回導入したAWSも、そうしたデジタル化に対して有効な武器となってくるはずです」。クラウドコンピューティングの持つ可能性。それが、日本を代表する精密部品開発企業の可能性を、さらに広げることが期待されます。
社名 | 株式会社大川電機製作所 |
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所在地 | 東京都世田谷区桜新町2-11-20 |
創立 | 1951年12月11日 |
資本 | 4,800万円 |
従業員数 | 182名(2022年10月現在) |
事業内容 | 主に半導体製造分野や航空宇宙分野、通信機器分野向けに精密機械加工部品を受注生産。高度で緻密なオーダーに応えつづける優れた金属切削技術で、先端産業の発展に貢献しています。 |
URL | http://www.odsinc.co.jp/ |
※本事例の内容は、2022年10月19日取材時点のものです。
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